IPO直後のベンチャー企業がNasdaqで追加の資金調達に成功
2022年1月28日、がんの早期発見に特化した分子遺伝学的診断ベンチャーであるドイツのMainz Biomed N.V.は2度目の公募増資(Public Offering)を実施、150万株を一株あたり15ドルで売り出し、2,250万ドル(約27億円(1ドル120円換算))の資金調達を行いました。
Mainz社は、わずか3か月前の2021年11月4日にNasdaqにIPOしたばかりの会社でした。IPOの際には、200万株を一株あたり5ドルで売り出し、1,000万ドル(約12億円(1ドル120円換算))の調達を行っていましたが、IPO後3か月にも満たない期間で2回目の公募を行い、3倍の株価で、倍以上の資金を調達することに成功しています。
IPOとFollow-on Offering
IPOは、日本では「新規公開株」や「新規上場株式」と呼びますが、正式にはInitial Public Offeringであり、Initial(初回の)Public Offering(公募)です。「初回」があるのであれば「2回目」や、「3回目」があるのは当然で、Mainz社の場合もInitialに続いて二度目のPublic Offeringを行った、という次第です。
IPOに続く2回目以降の公募は、一般的にFollow-on Offeringと呼ばれています。Nasdaqのみならず、NYSEを含む米国市場ではFollow-on Offeringは極めて一般的で、当たり前のように行われています。
日米のFollow-on Offering実績
実際に統計データをみてみましょう。2017年から2021年の5年間の間に約2,000社が米国でIPOを行っています。このうち、IPO後にFollow-on Offeringを行ったケースは、2022年2月末時点で513社あり、そのうち約8割がNasdaq上場企業によるものでした。複数回のFollow-on Offeringを行ったのは230社。5回以上行った会社が22社もあり、最高は8回もFollow-on Offeringを行っていました。
あるアナリストの報告によると、2021年の年間のFollow-on Offeringの合計件数(2017年以前にIPOしている会社を含む)は1,300件を超えているそうです。この数字は公式には確認できていませんが、いずれにせよ、米国市場でIPOの資金調達がいかに活発に行われているか、ということは理解できると思います。
ちなみに、2021年の東証におけるIPO以外のPOは39件です。内訳は投資法人(リート)が13社、東証1部上場企業が23社、ジャスダックが2社、マザーズはわずか1社です。
おわりに
ベンチャー企業がIPOを検討する際に、国内市場と米国市場の比較を行いますが、上場コストやバリュエーションに関しては比較的正しく認識されている一方、上場後の更なる成長のために重要な役割を果たすはずのFollow-on Offeringに関しては、殆ど理解されていないと感じます。東証ではIPOは資金調達の事実上の最終到達地点で、その後の成長は自社で稼ぐしかない、という状況になりますが、米国市場ではIPOはゴールではなく、その後の成長戦略のための一通過点でしかありません。Follow-on Offeringに関する統計は、その違いを如実物語っていると言えると思います。
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