コインチェックがSPACを利用してNasdaqに上場

コインチェックがSPACを利用してNasdaqに上場

2022年3月22日、マネックスグループは、暗号資産交換業を手がける子会社コインチェックを特別買収目的会社(SPAC)との統合を通じて、年内にも米国Nasdaq市場に上場させると発表しました。暗号資産業者は、東京証券取引所が上場審査を受け付けない方針を取っているため、複数の同業他社もNasdaqやNYSEへの上場を検討している状況と思われていましたが、コインチェックが先陣を切る形となりました。

複雑なdeSPACスキーム

マネックスグループのプレスリリースに詳細が記載されていますが、今回のdeSPACに際して、マネックスグループはまずオランダにCoincheck Group B.V.という法人(オランダ法人)を新設し、その下に中間持株会社を配置し、更にその下にコインチェックをぶら下げる組織再編を行います。そしてdeSPAC時には中間持株会社とSPACを合併させることにより、オランダ法人(株式公開時に法人形態が変更となりCoincheck Group N.V.となる)の下にSPACと統合したコインチェック事業を連結する形を取り、最終的にSPACに代わりオランダ法人をNasdaqに上場させるというスキームを計画しているようです。この一連の取引の結果、オランダ法人の株式の7割超をマネックスが保有し、連結子会社とする一方、既存のSPAC株主にはオランダ法人の約18.5%が割り当てられる予定です。

SPACがSECに提出した臨時報告書(Form 8-K)を確認した限りでは、上場後のオランダ法人が(SEC規定上の)内国法人となるか、外国法人(FPI)となるか明らかではありませんが、わざわざオランダに法人を設立する複雑なスキームを構築していることからもFPIとなる予定であると思われます。内国法人である場合は財務報告において米国会計基準(US GAAP)を採用する必要がありますが、FPIであればUS GAAPである必要は必ずしもなく、国際会計基準(IFRS)を採用することも可能となります。現在マネックスグループはIFRSを採用していますので、子会社であるコインチェックもIFRSに基づいて会計処理が行われています。

暗号資産に関する会計基準のポイント

暗号資産に関する会計基準は、明確な会計基準が存在しないため、その会計上の取扱いは必ずしも明らかではありません。暗号資産が現金や金融資産にはなりえない、という点ではUS GAAPとIFRSの見解は一致しています。US GAAPにおいては、在庫の定義として有形であるという定義がされているため、無形である暗号資産は在庫の定義を満たさないと考えられており、したがって原則的には無形資産として取り扱うのが妥当であるとされています。一方、IFRSでは在庫の定義に有形であることを要求していないため、無形である暗号資産も在庫として処理することが可能であると考えられます。実際、マネックスグループの有価証券報告書においても、コインチェックの保有する暗号資産を在庫として会計処理しており、以下のような説明が注記されています。

会計上の支配があると判断した暗号資産(利用者との消費貸借契約等に基づく暗号資産を含む)のうち、主に近い将来に販売し、価格の変動による利益又はブローカーとしてのマージンを稼得する目的で保有している暗号資産については、使用を指図する能力及び経済的便益が当社グループに帰属することから、IAS第2号「棚卸資産」に基づき、連結財政状態計算書上、棚卸資産として認識しています。

つまり、将来の売買目的で暗号資産を保有しているので、それは原油等のコモディティ(商品)取引と同じビジネスモデルであり、したがってコモディティ取引と同様に暗号資産を在庫として会計処理することが妥当であるという見解です。

最終的にコインチェックがUS GAAPを採用するか、引続きIFRSを採用するかは明らかではありませんが、今後の同社の会計処理や関連する注記は、将来のNasdaq上場を検討する同業他社にとっても参考になると思います。

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