日本における役員報酬の開示ルール
カルロス・ゴーン氏の報酬から飛び火して、日本で役員報酬の内容や決め方等の開示が拡充されるようです。日本では上場企業に対し201年3月期より報酬1億円以上の役員の報酬を開示するというルールが導入されました。有価証券報告書上で記載が要求されている項目は、取締役、監査役および社外役員の区分ごとに報酬等の総額、報酬等の種類別(基本報酬、ストックオプション、賞与および退職慰労金等の区分)の総額および対象となる役員の員数となっており、さらに役員の報酬等の額または算定方法の決定に関する方針を定めている場合には、当該方針の内容および決定方法を記載し、そうした方針を定めていない場合にはその旨を記載する必要がある、とされています。
米国における役員報酬の開示ルールと開示例
役員報酬の開示についてはアメリカでもこれまで何度も議論がされ、その度に何度も要求事項(Regulation S-K, Item402)が改定されてきました。その結果、Compensation Discussion and Analysis (CD&A)と呼ばれる、報酬版のMD&Aとも呼ばれる詳細な開示が要求されるに至りました。CD&Aにおいて、企業はCEO、CFOに加え最低限上位3名の業務執行役員報酬について開示、説明することが要求されています。全部読むのは大変ですが、具体的なイメージをつかむために、こちらにAppleのCD&Aをリンクしておきます。たっぷり20ページあります。
なお、Nasdaq等にIPOするベンチャー等でEGCに該当する場合は、役員報酬の開示に関して軽減措置が認められ、CD&Aを用意する必要はありません。EGCは代わりに、
- CEO+報酬額の高い業務執行役員2名、計3名の報酬の開示(5名の開示は不要、かつ、必ずしもCFOの開示が要求されない)
- 過去2年(通常は3年)の役員報酬のサマリ表及び内容説明の開示
- 期末時点で未行使の株式報酬
- 取締役の報酬テーブル
- その他重要項目についての説明(退職給付プラン等)
といった項目のみに限定した開示が許容されています。こちらも具体例があった方がイメージがつきやすいと思いますので、2017年にIPOしたAllena Pharmaceuticalsという会社の開示例をリンクしておきます。約5ページの開示で、日本企業から比べるとそれでも多いですが、CD&Aよるは遥かに軽いです。
なお、アメリカでは役員報酬については年次報告書(Form 10-K)ではなく、株主総会の招集通知(Proxy)において開示するケースが殆んどです。ProxyはForm DEF 14AとしてSECにファイルされます。