東証の100倍の資金を集めるアメリカの特別買収目的会社(SPAC)

本日(2021年2月9日)、日経新聞にも載っていましたが、千葉ロッテマリーンズ元監督のボビー・バレンタイン氏が社外取締役を務めるEvo Acquisition Corp.が$108,700,000(約115億円)を調達し、現地時間2月9日にNasdaq Capital Marketへ上場することとなりました。Evo社は、ブランク・チェック・カンパニー(a blank check company)とも呼ばれるspecial purpose acquisition company (SPAC)という形態の会社で、将来ベンチャー企業などの買収を行うことだけを目的とした会社で、オペレーションの実態は存在しないペーパーカンパニーです。

SPACの仕組み

SPACは、参画する著名な投資家や経営者の信用や目利きをベースに投資家から資金を集め、買収する会社を探します。SPACの上場後、一般的には2年間に、調達した資金を使って買収を行います。買収が成立するまで調達した資金は信託口座で管理され、SPACが自由に使用することはできません。期限以内に買収が成立しない場合は、資金は投資家に返却され、SPACは解体されますが、通常、上場時にはSPACはターゲット会社を物色済みであり、買収が成立しないケースはあまり多くはありません。今回Evo社は日本のテック系あるいは金融系の会社の買収を行う予定だと報道されています。

SPACは近年爆発的に増加し、巨額な資金を調達

SPACは最近ソフトバンクが設立したことなどから、にわかに注目を集めているスキームですが、歴史はずいぶん古く1990年代から存在していたようです。近年まであまり事例は多くなく、以下の表にあるようにリーマンショックの影響もあり2009年にはわずか1件、その後も10件前後で推移していたのですが、2017年ごろから増加傾向に転じ、2020年に一気に248件にまで爆発的に増加、調達した資金も合計で830億ドル(約8.7兆円)にまで膨れ上がりました。2021年に入っても増加の一途を辿っており、昨日(2021年2月8日)時点で、すでに118件のSPACが上場し、354億ドル(3.7兆円)を集めています。東証のIPOの調達総額は、過去最高の2013年でも約3,735億円、昨年(2020年)は僅か823億円ですので、比較するとSPACの破壊力の凄まじさが良く分かります。

 

日本のベンチャーにもSPACの影響が

今回Evo社のIPOは、B・ライリー・セキュリティーズとSMBC日興証券が共同主幹事を務めるとのことです。今後日本のスタートアップにおいても、SPACを利用するという選択肢が広まる可能性が出てきていると言えると思います。

 

SECのウェブサイトにはEvo社の上場申請書(Form S-1)が開示されているので、興味のある方はご覧ください。(こちら→URL

財務諸表も開示されていますが、会社の設立は2020年11月20日、期末日は2020年12月10日、わずか3週間しか存在していない会社に対してKPMGがちゃんと監査報告書を出しています。なお、BSは創業費用と未払金が計上されているだけで、現金を一切保有していない、という、上場会社のBSとはとても信じがたい中身となっています。

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